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Darling Saga:影に抱かれて
アスペルギルス 著


 §§(セネー海岸:MAP9終了後)§§

 倉庫に入る怪しい人影を見たような気がして、メリエルはその中に足を踏み入れた。

 人を呼ぶ、という発想に至らなかったのは、やはり気が昂ぶっていたのかもしれない。マールの港でリュナン公子の軍勢に参加し、帝国軍との最初の実戦を経験した。自分の力である程度までは戦えるという確かな実感を得て、それが賢者マイオスの娘という誇りと結びついて過信を生んだのかもしれない。

 「…誰かいるの?」

 メリエルは声を張り上げた。手元の魔道書にかかる指に力がこもる。初めての実戦を潜り抜けたとはいえ、未知の敵かもしれないものとただ一人相対するというのは初めてのことだ。

 「返事をしなさい!」

 その声に、人影は観念したかのようにゆっくりと立ち上がる。

 「…誰なの?」

 やがて、高い窓から差し込む月明かりがその姿を浮かび上がらせる。

 そこに、メリエルは自分自身の姿を見ていた。

 

 メリエルは、己の目を疑った。けれど、静かに立ちあがり穏やかな表情で自分を見詰めているその人影は、まぎれもなく彼女自身と同じ姿をしていた。鏡に映したように生き写しの、自分と同じ姿をしたもう一人の自分。

 「…あなたは、誰?」

 メリエルは自分の足が震えているのを感じていた。人影は無言のままでこちらを見つめている。メリエルと同じアメジストの色をした瞳。やがてその人影は彼女に向かってにっこりと微笑みかけた。

 「…ひっ…」

 その穏やかな微笑みは、しかし彼女の心を凍り付かせた。全てを見透かすかのような微笑み。己の分身を見たものは死ぬという、そんな伝説。メリエルは幼い頃に聞いたそんな昔話を思い出していた。

 人影はゆっくりと足を踏み出し、メリエルに向けて足を運ぶ。メリエルはその己の姿に気おされるように後ずさった。人影はかまわず近づいてくる。やがてメリエルの背中が壁に突き当たると、人影は彼女を追いつめるようにその前に立ちはだかった。

 「…いやぁ…」

 夢に怯える子供のように、メリエルは、身をすくめる。人影はメリエルの手を掴んで壁に押し付けた。幻ではない。明らかに血と肉を備えているもの。思いもよらぬ力で掴まれてメリエルは悲鳴を上げることもできずガタガタ震えながら背を丸めた。

 もうひとりのメリエルは、同じ顔をした少女の顎に指をかけて上を向かせる。

 「…ひ…ぁ…」

 目の前に、彼女自身の顔がある。彼女自身の吐息がかかりそうなほど近くに。その息は暖かかった。夢でも幻でもない、確かに生きているもう一人の自分。

 その顔が、いっそう彼女に近づく。何が起きているのか理解できずに立ち尽くすメリエルの唇を、もう一つの唇が塞いだ。

 「…ん…むぅ…」

 二枚の舌が絡み合う。同じ型から抜き出したような同じ姿の二人の影が重なった。自分自身にされるキスは決して不快ではない、むしろ、気持ちいい。メリエルの体から力が抜けていく。

 メリエルが無抵抗と見てとったのか、人影はメリエルの手を解放し、その腕を彼女の腰に、胸に回してきた。まるで戯れる恋人のように。

 怯え以外に、別のものがメリエルの体を震わせていた。己の肉体を知り尽くしたかのようなもう一人の自分が、メリエル自身も知らなかった秘められた欲望を目覚めさせていく。服の上から腰を撫でられ、胸を触られ、メリエルは知らず知らずにもう一人の自分の体に腕を回す。

 メリエルは、固く太腿を擦り合わせた。そうしなければ腰が砕けてへたり込んでしまいそうな気がして。何か熱いものが自身の奥底から湧いてきて、そこから滲みでてくるような気がして。

 「…はぁ…」

 重なった唇が離される。朱い唇の間の僅かな距離を混じりあった唾が糸を引く。その微かな距離を埋めようとするかのようにメリエルの頭が少し、前に動く。

 もう一人のメリエルは、構わず攻める場所を変えていく。濡れた唇がメリエルの耳に、首に、肩に口づけの雨を降らせていく。

 「…ひゃ…は、はぁ…」

 キスの雨の一つ一つに、メリエルは敏感に反応して身悶えしていた。もう一人のメリエルは次第に大胆に、メリエルの衣裳を脱がせにかかった。

 白日に曝された乳房に、腰に、もう一人のメリエルの手が伸びる。白くしなやかな指が固い乳房をほぐしていく。掌全体で包み込むような愛撫を加えながら、二本の指が絞り出すように乳首をこねていった。

 メリエルはもはや溢れる喘ぎ声を抑えようともせず、もう一人の自分が与えてくれる快感に身を任せていた。

 「…や、あひっ…あぁぁう…ん…」

 もう一人のメリエルの指が、ついに処女の秘裂をとらえる。既に何一つ覆うもののなくなったその部分は、はしたなく溢れさせた愛液にぴちゃぴちゃと淫靡な音をたてていた。

 「…あひぃ、そこ、そこぉ…あはぁぁぁぁ…」

 一本、二本と、細い指がメリエルの処女を侵していく。華奢な指が未通の裂け目を広げていく微かな痛みは、程なく優しい動きが醸し出す快感にかき消されていった。

 「や、いやぁ、いや、いやぁ…」

 もう一人の自分自身に目覚めさせられていく肉体。メリエルの心はその異常な経験の中で麻痺していく。夢と現[うつつ]の間を漂いながら、メリエルはもう一人の自分の愛撫によって湧き起こる快感に身を任せていった。犯す自分と、犯される自分。どちらが夢なのか、どちらが現なのか。

 犯しているのか、犯されているのか。

 もう一人のメリエルは、濡れそぼつクリトリスを指でなぞる。

 「…あ、あぁぁぁー…っ!」

 メリエルは、初めての絶頂にその華奢な体を震わせた。

 

 達した後の体の震えが止まらない。メリエルは、足腰に力が入らずにその場に崩れ落ちてしまう。

 その目の前で、未だ衣を纏ったままだったもう一人のメリエルの素肌が露にされていく。

 下半身を覆う布が取り去られ、そこに隠されていたものがその姿を現したとき、メリエルは底知れぬ恐怖に悲鳴を上げていた。

 猛々しく勃起した男根。血管を浮き出させ黒く禍禍しい姿を曝す熱い肉の棒。見たことはなかったが、メリエルにもそれが男性器であることはわかる。しかしその大きさと凶凶しいまでの醜怪さは彼女の想像を遥かに越えていた。

 メリエルは、おそるおそる目の前に立つ人影を見上げる。

 そこには、彼女と同じ顔をしたもう一人の自分が、アメジストの瞳に邪悪な笑みを浮かべて、彼女を見降ろしていた。

 「…キャァァァァーーーーッ!」

 兇暴な力がメリエルの脚を割る。もう一人のメリエルの股間にそそり立つ醜怪な肉棒が、濡れそぼつ処女にねじ込まれていく。

 …メリエルは、それきり意識を失っていた。

 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

 「…やべぇ、やべぇ…こいつはオイゲンの爺ぃに見つからねぇうちにトンズラっきゃねぇな…」

 コトを終え、自分本来の姿に戻りながら、ナルサスは言った。

 彼だけが持つ特殊能力『変身』。単なる変装の域を越えて対象のもつ属性や能力までもコピーしてしまうその能力は、これまでにも何度も彼のピンチを救ったものではあったが。

 「今度ばかりは、ちとやりすぎたかな?」

 何かめぼしいものはないかと倉庫を漁ろうとしたところをメリエルに見つかり、咄嗟にメリエルに変身してしまったのはまあ、いいとして。

 「怯えた顔が可愛かったとはいえ、成り行きでヤっちまったのはなぁ…」

 とは言え、過ぎたことを悔やむというのは彼の性ではない。

 ナルサスは、とるものもとりあえず軍資金の半分を攫ってリュナン軍をそそくさと逃げ出した。

 

 終

 


解説

 ほら、ちゃんと男を出したぞ。(何のことだかわからない場合は前作「覚醒する翼」の解説を読んでいただきたい)

 メリエル「…たく、この人は…」

 これで文句はあるまい。

 メリエル「普通の人なら『リュナン公子、エンテだと思ってエッチしてみたら実はナルサスであらびっくり』という話を書くとこでしょう『ナルサスの変身』ネタを使うんであれば」

 おお(ぽん、と手を叩く)。…それは気がつかなかった。

 ナルサス「俺は嫌だぞ、そんな話は」

 メリエル「で、なんだってわたしが今回のネタなんです、何も必然性ないでしょう」

 理由1、『ナルサスのトンズラ』イベント時点でリュナン軍にいる可能性がある。…というか、メリエルは絶対いる。直前の戦闘で死んでない限り。

 メリエル「それならエンテでもいいでしょう。絶対いますよ、死んだらゲームオーバーなんだから」

 理由2、このシリーズで今までネタにしていない。

 メリエル「…女性キャラ全員制覇でも狙ってるんですか…」

 ふっ…。…遠い夢だねぇ…。

 メリエル「まだ、ゲーム半分もクリアしてないくせに…」

 では、また次回お会いしましょう。

 


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