私は21歳以上です。



ある土曜日の放課後(その1)

                        作:星朗さん


「浩太ぁ、今日の午後、暇ならつき合ってよ。」
同じクラスの新条かおるにそう言われた時、僕は気が付くべきだったんだ・・・・・。

「浩太、それじゃあ行こうか?」
「えっ?行くってどこに?」
「あんた、まさか忘れてる?今朝、『午後は私に付き合う』って言ったじゃない。」
しまった。すっかり忘れていた。
「いいけど、どこに行くのさ?」
「いいから、いいから。さ、行きましょ。」
こうして、僕と新条かおるは2人で歩き出した。

僕と新条かおるは都内の私立中学に通う3年生だ。
新条かおるは、いかにもスポーツに打ち込んでいるタイプの活発な女の子だ。
肩より少し上に切ってある髪がとても似合っている。とても同性受けするタイプだろう。
僕と彼女は同じ陸上部の男子と女子の部長同士だが、それほど仲がいいという訳でもない。
むしろ、どうして呼ばれたのかも見当がつかないくらいだ。
「なぁ、どこに連れて行くんだよ?」
「体育倉庫。」
「体育倉庫ぉ!?・・・なんで?」
「明日、女子は記録会があるの。だからライン引きとかを手伝って欲しいのよ。
男子部の部長でしょ。それに男子は今日は休みじゃない。手伝ってよ。」
「ん・・・・、まぁ別にいいけど・・・・・。」
早口でまくし立てられて、僕には断わることが出来なかった。

ゴロゴロゴロ・・・・・。
体育倉庫の重い鉄の扉を開けると、中はうす暗く何も見えなかった。
電気のスイッチを探そうと中に足を入れた途端、僕は後ろから突き倒された。
ドサッ!
突然のことで前のめりに倒れた僕の耳に、かおるの声が聞こえてきた。
「みんな、いまよ!」
その声を合図に、3〜4人の人間が僕の体の上に乗ってきた。
「イタタタッ!痛ぇって!!」
僕は突然のことに訳がわからず、ただ叫ぶしか出来なかった。
ゴォン!
後ろで、鉄の扉が閉まる音がした。

暗闇の中、僕は飛びついてきた人間に床に押し倒されていた。
どうやら両手両足に1人ずつ人間が乗っているらしい。
さらに別の1人の人間の手が、僕の両手を紐で縛る。
抵抗はしてみたが、ほとんど無意味だった。
後ろ手に縛られたので体の自由が利かない。
さらに足まで縛られてしまった。
これでもう、本当に身動きがとれなくなってしまった。
「もういいわよ。」
声の主はかおるだった。
そうして倉庫の中に明かりが点けられた。
そこには、かおるの他に4人の女の子がいた。
どの子も知っている子ばかりだ。
1人は同じクラスの三浦加奈子。
残りの2人は女子陸上部の佐々木香苗と小沢素子、そして・・・・
「羽崎美穂!」
僕は思わず声を出した。
羽崎は、つい先日僕に告白してきた女の子だ。
しかし僕は、「タイプじゃないから」とふってしまったのだ。
「浩太ぁ、お前、この前美穂のことふったろ?」
「何様なんだよ、お前はよぉ。」
「美穂がどれくらいお前のことが好きだったか分かるか?」
「いまから浩太に教えてあげるよ。」
かおる達4人は、口々に勝手なことを言い出した。
僕は怖くなって美穂に助けを求めた。
「美穂、助けてよ。」
「好きだったのに・・・。最悪。」
「はっ、バッカじゃね〜の?美穂はもう、お前のことなんかどうでもいいんだよ!」
「それより、浩太に美穂が受けたのと同じくらいのショックを教えてあげるよ。」
こうして、僕の忘れることの出来ない午後が始まった。
                                      
  

  その2へつづく      投稿の目次

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