私は21歳以上です。



      青いイナズマ 

                        作:テンちゃん  
     
 「にぃ~い~っぽぉん、にぃ~い~っぽぉん、、、、、
ニッポンっ!、ダダダ!、、、ニッポンっ!!タタタ!」

 5万人収容可能なスタジアムは青一色に埋めつくされ、
それに伴う熱気と芳香に包まれていた。
 サポーターは主催者側の意向で若い女性のみ。みんな思
い思いのペンティングを小さな顔に施し、両手を合わせ祈
るように見入る子、友人と肩を組み大声で応援する子など
観客席は『女の子ウェーブ』で揺れていた。

 「ゴォォォォ~ル!、ゴ~ル、ゴ~ル、ゴォォ~ル!」

 まずは先取点。イメージどおり転がってきたスルーパス
に俺の左足がダイレクトに当たる。
 監督をはじめコーチや控え選手がベンチから飛び出して
くる。今日も俺がヒーローか、、、まいっちまうな、、、
あとは相手選手とカッコよくユニフォーム交換するだけ。

 「キャ~ァ!!、、キャ~!、、、キャ~ァ!、、、」

 大画面にアップで映される女の子達の顔。うん。どれも
みんなカワイイ。感激のあまり泣いてる子もいる。
 汗がキレイな髪を潤し、必死に声援を送る姿は余計カワ
イク見える。
 おいおい、泣くなよ、、こんなゴールだったら何本でも
決めてやるぜ、、、
 
 ハーフタイム。1点リードのまま控え室に戻るゲート。
すさまじい歓声と女の放つフェロモンに後押しされる。
 そう。このまま攻めればイイ。決して『守り』に入って
はならない。ホームでの試合。分はコチラにある。
 チッ、、、そんなこと解ってるって、、監督さんよ、、

 ピ~ッ!という笛に後半戦が始まる。イイところまでボ
ールが行くのだがなかなかゴールを割ることができない。
この時間、どうしても欲しい追加点に気持ちばかり焦る。
 おいっ!、、そっちじゃないって、、、ったく、、、

 「ピ~!、、、、ピピ~!!、、、ピィィィ!!」

 このままの流れで終わろうとした後半42分。いきなり
主審が目を見開き味方の1人に駆け寄る。
 え?、まさか、、、、、ち、ちょっと、、、、ポケット
から出したのはレッドカード、、、、
 マズイ。指令塔の彼が退場となると非常にマズイ、、、
敵にブーイングの嵐が舞うなか試合は再開。

 大丈夫だ。浮き足立ってはならない。コチラがリードし
ているんだし、今までどおりプレスをかけていけば問題な
い。ウェ?、、!、、パスミスしやがった!!、、あ!

 「どうてんゴォォォ~ル、、、ゴォォ~ル!、、、」

 ゲゲッ!、、マジやば。格下相手にホームでの世界を掛
けた公式試合。負けるなんて絶対ヤバイ。
 チラリと監督を見ると俺にもっと下がれの合図。つまり
は守りに徹しろってこと。
 誰だよ、、さっきまで攻め続けろなんて言ったのは、、
指揮系統もガタガタ。だいたい自分のポジションがどこか
も解らない。
 ロスタイム。なんとか逃げきらなければ。負けさえしな
ければ後で言い訳はいくらでもできる。
 
 ワッ!、、センターリングしやがった、、こいつは頭で
カットだな、、、よしよし、、チョロイもんさ、、、
 ウゲッ!ヤバ!、なんで『うしろ』に、、ま、まさか。

 「オゥゥゥン、、ゴォォォ~ル!、逆転ゴォォル、、」
 
 数秒、ゴールキーパーと恋人のように見つめ合う。
 ピ~ィ~~、、ピィ~~~ィ。試合終了。穴、、、、、
アナはどこだ、、隠れたい、、、隠れてやり過ごしたい。
 ダメ。まるでダメ。凍てつくようなサポーターの視線。
 と、いきなりフーリガンと化した女の子数人がグランド
になだれ込む。
 次の瞬間、、、凄まじい怒号と共に大地が揺れたかと思
うと青い波、青い渦が俺に向かい迫ってきた。

 「ナニやってんのよぉ!!ば~か!、ひんむいちゃえ」

 50000人対1人。味方選手や相手選手は危険をいち
早く察知して逃走。
 特に女の場合、ブチ切れると男よりもおそろしい。あれ
よあれよという間にすっ裸にされた俺はハーフラインまで
担がれる。なにかの祭のように。

 「やめ~て~!、、、ヒィ~!、、やぶかないでぇ!」

 ビリビリビリッ!ボロ雑巾のようになった青のユニフォ
ームの布キレもはぎ取られる。 
 全国ネットどころではない。衛生中継で175ヶ国にオ
ンエアされる俺の裸体。まさにリアルタイムのフルチンカ
ップ。逆レイプトーナメント。
 オ~~ゥ、、、ノォ~~~~、、、、外国のメディアも
呆れ顔。こんな時でも二ヶ国語放送か。

 「犯しちゃえ!、、犯しちゃえ!、、きゃははは!」

 俺のサッカー人生は今日で最後。聖なるグランドの真ん
中で騎乗位と顔面騎上。アエぐ時、美顔の小さな国旗がな
んだか色っぽい。あと49998人、、、、、、、無理。
 がんばれ俺。がんばれニッポン。俺はこの国を、そして
この民族を愛している。

                     おしまい


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