私は21歳以上です。

エスニック
 
 性犯罪根絶法第31条

                                               その1

 

 「おまえのような男には、おにあいの処刑方法だよ」。
 「はっはっは、ひと思いに殺すのはつまらないからな」。

 残忍な女司法官達が口々に投げかけてくる毒のある言葉。もうどうあがいたところで助かることはないだろうと、アキラメに近い気持ちでいたが、いったいその刑罰がどんなものなのか、全く想像がつかない。

 「くそーっ、どうせ殺すのならばひと思いに殺してくれっ!」。

 精一杯の虚勢を張って、にらみつけたところで、どうなるものでもないのだ。現在のこの国の法律の下では、彼の起訴された罪状は文句無く死刑になって当然の重罪だったのだ。隠し通すことが出来なかった段階で、国外逃亡を図ればよかったものの、それすらも失敗をして、あげくの果てに密告によって官憲の手に拘束された。

 まさに最悪のパターンと言ってもいい。

 女権拡大主義の嵐が吹き荒れる中、男共の性犯罪の撲滅を掲げて政界にデビューした、ジェンダー政党が、あっというまに国会を牛耳り、そして初めての女性大統領の下に制定された世紀の悪法「女性の人権を尊重し男性による性犯罪の根絶するための法律」つまり「性犯罪根絶法」を施行した。

 確かにこの国における性犯罪の蔓延はゆゆしき社会問題だったし、それに対する今までの政府の対応は、他の先進諸国に比べてみても、あまりにも無策にすぎた。町中で公然と女性が数人の男達にレイプされていても、警察官は取り締まろうともせず、傍観しているだけ。また裁判所に送られたところで、せいぜいが懲役2年という、あまりにも軽すぎる刑罰でお茶を濁していたに過ぎないのだ。

 これでは性犯罪によって、人生をむちゃくちゃにされた女性達の怒りが爆発してもおかしくはない。多くの良識ある男性すらもそう感じていた。だからこそ、ジェンダー政党が急激に勢力を伸ばしてきたとき、多くの男性有権者達ですら、その至極まっとうな主張を歓迎したのだ。

 しかし最近の動きは少し行き過ぎどころか異常ですらある。いつのまにか性犯罪根絶法自体が、どんどんとその法律本来の趣旨を逸脱し、拡大解釈が一般常識を凌駕するまでになってきていた。大統領令によって作られた「女権保護監視委員会」とその実働部隊である「性犯罪取締警察」(通称セクハラ警察)の設置が、その傾向を加速したのだ。

 今では、ごくささいなセクハラ行為ですら、社会から抹殺されるに足る立派な重犯罪である。例えば昔は軽犯罪にすらならなかった、通勤電車内における痴漢行為などは、被害女性の一方的な告発だけで、簡単に社会から抹殺され、さらにセクハラ警察の取り調べ次第では、確実に懲役20年はまぬがれないという有様なのだ。

 そして彼の罪状。性犯罪根絶法第31条 詐術をもってみだりに複数の女性と性行為をなし、その女性をして精神的な苦痛を与えたる者、並びに女性の尊厳をいちじるしく冒涜したる者は、死刑または20年以上の羞恥刑に処す。

 そして今、彼に下されたのは、死刑よりも過酷といわれている、羞恥刑という代物だった。この刑罰はまさに、この法律か制定されたときに作られた、この法律にしか適応されない独特の刑罰であって、本来は性犯罪者をまっとうな社会人として更正させることを目的に作られたものだった。

 しかし、今や性犯罪を専門的に取り締まる性犯罪警察と司法官制度によって、その趣旨は大きく変貌し、憎むべき性犯罪者に対し、社会的に制裁を加えるという、報復的意味合いがより濃厚となっていた。

 いってみれば、彼の犯した罪とは、三人の女性を同時に愛したこと。若い頃からフシギと女性にもてた彼は、ほぼ同時期につきあい始めた三人の女性、リサ、マリア、アグネスと、それぞれ別々に愛し合った。三人共に素晴らしくステキな女性であり、優柔不断の彼にとって、その中から誰か一人を選ぶなんてとてもできなかった。

 罪の意識すらもなく、同時進行で愛を育んでいく中で、朝はマリアと、昼はアグネスと、そして夜はリサと、というぐあいに一日に三人の女性と別々にセックスをくりかえすことも多くなった。そしてとうとうそのヒミツがばれる日がやってきた。


 いつものファッションホテルの一室、この日はちょうどマリアとセックスをしている最中だった。マリアは俺のセックステクニックに酔いしれていた。甘く優しい俺の愛撫によって、彼女は官能の嵐の中を漂っていた。

 そのとき、突然大きな音を立ててドアが開き、二人の女性達が部屋の中に乱入してきた。リサとアグネスだった。俺達は突然のちん入者に驚き、一瞬動きが止まった。そしてすぐにマリアの悲鳴が上がった。

 「きゃーーっなにっなによっ、あなた達誰なのっ!!」。
 マリアは気が動転しているのか、下半身は俺のペニスが入ったままだ。

 「あっ、リサに・・・アグネス・・・むっ、これは・・」。
 俺はびっくりして跳ね起きようとしたが、マリアが両足を俺の腰に巻き付けているので、彼女の上から動くことも出来ず、なんともシマらないカッコウのままで彼女たちに対応せざるを得ない。

 「これはいったいどういうことよ!」。と半乱狂のリサ。
 「あなた、私達をだましたのね」。怒りにあるえているのはアグネスだ。

 「いや、誤解だ・・、ちょっと待ってくれっ・・」。
 突然のことでいつものさわやかでキレのイイ言い訳が思いつかない。

 そのおろおろとした対応に、今度はマリアの反応が変化した。

 「なっ、なんなのよあなた達・・・さては・・・あなた・・・私を裏切ったってこと?」。
 マリアは顔色を変えると、思わず自分に覆い被さっている男の身体を突き放した。そしてさも汚らしいものをみるかのように俺を一瞥すると、きっとに乱入してきた二人の女達に対して向き合った。

 半狂乱になった女達によって、その狭いファッションホテルの一室は、とんでもない修羅場と化した。マリアに突き飛ばされてベッドの脇でおろおろする彼の前で、乱入した二人の女達と、未だに全裸のままのマリアが激しく言い争う。

 「そうか。それなら仕方がないわ。誰の身体が一番素晴らしいか、勝負して決着をつけようじゃないの」。
 と提案したのはヌードのままのマリアだった。
 「いいわ。受けて立つわ」。
 「わかったわ・・・」。
 リサとアグネスも間髪を入れずに同意する。そして言うが早いか、二人の女達も一斉に服を脱ぎはじめた。

 おもわぬ成り行きに、男はあわてふためくばかりだ。
 「ちょっと待ってくれ。ま、ちょっとみんな、少し冷静になって考えてくれ・・・」。

 「何を今更・・・」。
 「そうよ。元はと言えば全てアンタのせいなんだからね」。
 「三人相手なんだから、覚悟してかからないと体が持たないかもね・・」。

 女達はくちぐちに好きなことを言いながら、男の身体に襲いかかった。マリアがまっ先に彼の首に抱きつき、続いてリサが右腕にしがみついてきた。一足遅れたアグネスはと言うと、いきなり下半身めがけて突進してきた。 

つづく


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性犯罪根絶法