私は21歳以上です。


エスニック
   アマゾネス外伝  1
      =侵略者への報い=                      
 
ガキーン、ズバッ、ブシュ・・・・・・
 無我夢中で剣を振り回していたが、いつのまにか周りは敵にだらけになっていた。

 戦いの帰趨はすでに明白だった。数で勝るわが軍が、劣性の敵をあなどって一斉に総攻撃をかけたことが失敗だった。突如わが軍の後方から突入してきた敵の騎馬部隊によって、あっというまにわが軍の後方が崩れたち、そしてそのまま総崩れとなってしまったのだ。

 ともに幾多の戦場を駆けめぐってきた、仲間達、ビクレル、アレス、クロイエルも次々に討たれてしまった。そして、さっきまで血みどろになって剣を振るっていたピョードルの姿すらもう見あたらない。今やたったひとりでこの完全に囲まれた窮地から脱出するほかはない。

「でいやーっ!!!」。
 裂帛の気合いのもとに、目の前の敵を切り伏せようとした。しかし一瞬の差でさらっとかわされてしまい、逆にバランスを崩してしまう。すでに徹夜による強行軍に続いて、始まった激戦の連続によって、彼の疲労は限界に達していたのだ。

 びゅっ。
 槍の穂先が頬を掠める。あわてて飛び去ることで、辛うじて敵の反撃をかわすことが出来たが、そこを正面に位置したもう一人の敵の剣が襲った。

 ガキーン!!!!
 「あっっ!!」。手から剣の柄がはずれ、そのままスローモーションのように剣が地面へと突き立った。「くっ!!!」。

 今ここで剣に手を伸ばすことは、とても危険なことだった。まず間違いなく、そこを敵の第二の剣が襲うだろう。手を伸ばすと同時に、彼の腕か首か、どちらかが地面を転がることになる。しかし剣を持たずして、この包囲網から逃れることなどさらに不可能な話でしかない。

 ええいっ、イチかバチかだ。彼は一瞬の迷いもなく、手を剣の柄へと伸ばした。そしてそこに当然のように敵の剣が振り下ろされてきた。

 ぐわーーーん!!!!!
 彼の目に、頭上から振り下ろされる敵の剣の鋭い刃先が目に留まった。そして目を閉じたとたんに訪れた衝撃。

 不思議に痛みは感じなかった。視界が奪われ、真っ暗な中をどこまでも落ちていく自分を感じた。思えば短い人生だった。生まれてから今までの数々の思い出が、頭の中をよぎった。

 「俺は死ぬんだ・・・」。そう思うと共に、深い眠りにも似た感覚が支配した。




ふっ・・・・・
目を覚ますと、そこは真っ暗だった。

「お・・・おれは、死んだんだよな・・・」。
 なぜか体が思うようには動かない。頭の芯のほうにも、不快な疼痛のようなものが残っている。死んだにしては、身体全体の感覚が変に現実的だ。とはいえ今までに死を経験したこともないわけで、死がどんな感覚なのか判らない限り、何とも判断のしようがない。

 頭がぼうっとしていて、手も足も動かない。
「これが・・・あの世というところなんだろうか・・・・」。
ぼんやりと考えた。うっすらと星のようなものが見えるが、周囲はまったくの闇の世界だ。体中に痛みのような感覚が戻ってきたが、それと同時に猛烈な疲労感と睡魔が再び襲ってきた。

 「・・・・・・・・・・・」。
再び意識が薄れていき、そして何も考えられなくなった。


 「ιηασδΞΦΛμπΨΝΥθη!」。
 鋭い叫び声によって、真っ暗な世界から彼の意識が呼び戻された。うっすらと目を開けると、日中の強烈な日の光がまず目を刺し、思わず目をつぶる。
 「!!!!!」。

 どうやら死んでしまったとばかり思っていたが、まだ命を長らえているようだ。
(そうか。命はとりとめたのか。そして俺はまだ生きているのか)。
 次第に頭がはっきりとしてくるに従って、記憶がよみがえってくる。
(そうだ確か戦いのさなかに頭上に剣が振り下ろされてきて・・・・。しかしよくまあ、あれで命があったものだな。てっきり首を落とされたものと観念したんだが・・・・、そうか兜・・・、鋼鉄製のあの兜が敵の剣をはじき飛ばしたわけか・・・・)。
 
 「ΑηζδυΓονδρεΚψχθμΧ」。
 「Λνζτψ」。
 「ΠσσσρπΩ」。

 何人もの人の話声がする。どうやら声の主は女のようだ。しかし何をしゃべっているのか、全く意味が理解できない。どうやら彼の理解できない外国語のようである。外国語?ということはここはいったい・・・・。

 体中にずきずきする痛みの感覚が戻ってきた。背中からはひんやりとした感覚が感じられる。どうやら彼は、地面の上に大の字になって横たわっているようだった。ようやく周りの明るさに慣れてきた彼は、好奇心に駆られながら、再び目を開けて、周りの状況を確かめようとした。

 いきなり目に飛び込んできたのは、大きな肉のかたまり・・・。いや、はたしてそれすらも判らない。目を開けたとたんに視界を奪ったその物体が、どすんと顔面に押しつけられてきたのだ。

 「うぷぷぷっっっっ、くあっっっ」。
目と言わず、鼻と言わず、口と言わず、顔の全面にその肉色の巨大な固まりが押しつけられて、息が出来なくなってしまった。それは柔らかくそしてなま暖かく、また口元を覆ってきた部分については、じわーっと湿った感覚があった。

 「ΜξμδΑα」。
 なんともなまめかしい女の声が耳に届く。
 こ、これはっ!!!
 ようやく意識の覚醒をみた彼は、その肉塊の正体を理解した。

 あわてて手を動かし、起きあがろうと試みたが、
 「!!!!!」。
 手も足もびくりとも動かない。手首の感覚には、固い荒縄の感覚があった。どうやら大の字に横たわっているということは、両手と両足を荒縄か何かで、地面に結わえ付けられているということらしい。

 「うっっっっっ、ぷぷっ、ぱぁっ・・・」。
 彼は大声で叫ぼうと試みたが、顔面を覆っている肉塊、つまり女の臀部によって、口元を覆われていて、言葉にも何にもならない。巨大な女のお尻は、まさに自由奔放に彼の顔の上を動き回り、その中心部分からは粘性を帯びた液体がしみ出してきて、口と言わず顔面全体を覆い尽くす。

 動かない手と足を蠢かせ、顔を左右にイヤイヤをしながらながら、彼は必死になって、呼吸困難と闘った。しかしそのことが逆に上の女には心地よいらしく、女の口元からはさらに甘い吐息が漏れ出してくる。

 「Λοοορ Λσσσσρ」。
 女の動きがさらに激しくなりはじめたとき、今度は彼の下半身を別の感覚が襲った。

 「!!!!!!っ。うぷぷっっっっ!!!」。
 そう、この展開の中では当然予想されたこと。つまりは彼の意志に関係なく、この異常な状態の中でさえ、彼の下半身は生まれ持った本能に従って、オスとしては当然の反応を示していた。そこに女達の手が伸びてきた。

 鼻腔を刺す興奮したメスの臭気、そして口の中に進入してくる酸味を帯びた液体の感覚、そしてそれが人間の女特有のアソコから発するものであると、理解したとたんに、下半身にはあっと言うまもなく勃起してしまったのだった。戦いの一週間前から「女絶ち」をしていたことが今となっては仇となったのだ。


 今回の戦いの相手がアマゾネスだと判ったとき。彼の仲間の騎士達は異常な興奮状態に陥った。それはアマゾネスという伝説の国が、実はシロナガラス山脈の谷間に存在することが判り、伝説通りそこには女だけしか住んでいないこと。領土の拡大を続けるわが帝国がその版図に、アマゾネスを加えようとしたこと。その侵攻の先陣を仰せつかったのが、わが精鋭軍団に下されたこと。

 そして過去の幾多の戦陣の例に漏れず、勝利の暁にはその支配地において、どのような行為も許された。つまりは女だけの国に進入し、その戦いに勝利を収めたならば、どのような女もよりどりみどり、まさに兵士達にとって夢のような状況が生まれることが、十分に予想されたのだ。

 全線全勝を続ける精鋭軍団に属する、若い独身の騎士たちにとって、戦いの勝利は疑うべくもなく、その勝利の後の酒池肉林を夢見て、「女絶ち」をすることは、至極当然の行動だったろう。しかし今、その彼が夢見た酒池肉林は、全く逆転した状況で、実現されようとしていたのだ。


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 アマゾネスの原点に返った小説です。全3話シリーズです。

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