「星川さん、いつも真面目なあなたがこんな格好をしてきて…お説教ですよ。放課後、職員室にいらっしゃい」
「…はい、シスター」
 私は放課後、しおしおと職員室に向かった。後ろで、私をけしかけた高峰さん達数人がくすくす笑っているのが聞こえた。
 「明日、ルーズソックス、はいて来なさいよ、そしたら本は返してあげる」
 とてもとても厳しいうちの学校。でも、いつも教室の片隅で私が読んでいるその本は、父が残してくれた私の大好きな一冊で、どうしても返してもらわないわけにはいかなかった。
 どうして私をいじめるんだろう、何もしてないのに…不必要に布地を浪費しているずるずるしたソックスを、皆が横目で見て肩をつつきあう。恥ずかしくて、前が見られない。
「理事長が直々にお説教だそうよ。礼拝堂にいらっしゃい」
 私はうつむきながらシスターの背中についていった。礼拝堂のなかの、石造りの螺旋階段をおりていく。こんなところに部屋があったんだ…でも、いつも話の長い理事長のお説教の事を考えると、気分は沈んでいくばかり。
「両手をそろえてだしなさい」
「はい…?」
 かちゃり。不意に、シスターが何かをとりだしたかと思うと私の両手首に嵌めた。革の…手錠?
「あの、シスター?」
 かちゃり。言葉を挟む間を与えず今度は首に同じようなものを。シスターはそれらについた鎖を片手に巻いて、重い石の戸を開けたなかに私をおしこんだ。
「理事長、参りましたわ」
 そこに繰り広げられている光景を見て、私は、思わず息を飲んだ。部屋いっぱいに据え付けられたベッドには、理事長が5〜6人の裸の女の子達と絡み合っている…。
「やあ来たね、校則違反の星川くん」
 理事長はにやっと笑ってガウンを羽織った。
「君をどうやってここに呼びだそうか、かなり悩んだものだったよ」
「理事長、あたしの考えた作戦、うまくいったでしょう?」
 後ろで制服の胸を半分はだけた女生徒が得意そうにいった。…高峰さんだ。
 肩口をつかむ理事長の手から逃げようとしたが、シスターがじゃりっと瞬時に鎖を引いて、私は苦しくてそのまま座り込んでしまった。
「げほ、げほっ…」
「逃げたりすると、今度は停学や退学にするよ。君はただでさえ今は校則違反の生徒なのだから」
 理事長がにやりと笑う。
「おとなしく生徒指導にしたがいなさい…」
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